Pulsar Audio プラグイン「VM‑COMP(旧:Mu)」アップデートまとめ

Pulsar Audio の「Mu」が、最新バージョンとして VM-COMP に進化しました。今回はこのアップデート内容、Pulsar Audio社の背景、そしてプラグイン活用の観点から記事にまとめます。

アップデート内容

何が変わったのか

  • Mu が VM-COMP に名称変更されました。既存ユーザーには無償アップデート提供されています。
  • 新機能/改良点として以下が挙げられています:
    • サイドチェイン EQ:VM-COMP ではサイドチェイン信号に対してグラフィックなカーブ・エディタが追加され、サイドチェインのフィルタや整形を視覚的に操作可能になっています。
    • アタック/リリースの拡張レンジ:より速いアタック/より長めのリリースなど、よりアグレッシブ/多用途なダイナミック制御が可能になっています。
    • その他ワークフロー改良&視覚表示改善:旧版 Mu の機能を踏まえつつ、画面構成や操作性も見直されており、例えばリアルタイム波形表示やゲインリダクション表示などが改良されています。
  • 旧 Mu のプリセットやセッションも基本的にそのまま VM-COMP に引き継がれるとのアナウンスあり。既存の制作環境もスムーズに移行できる設計です。

なぜこのアップデートが意味を持つか

Mu は「バス/マスターで“粘り”ある“グルー”を出す変動バイアス(vari-mu)型チューブコンプレッサー」のエミュレートとして高く評価されていました。
その強み(自然なダイナミクス抑制、バス統合的効果)を引き継ぎながら、現代のミックス/マスタリング環境に即した機能拡張がされた点が今回のアップデートの肝と言えます。
例えば、側信号(サイドチェイン)整形の自由度が上がったことで、キック+ベース統合、ドラムバスのまとまり、マスター全体の統合感という用途においてさらに柔軟な使い方が可能になっています。

Pulsar Audio について

ブランドのバックグラウンド

  • Pulsar Audio は「アナログ機器/スタジオ機材をデジタルプラグインとして高精度に再現」することをミッションとするメーカーです。自社サイトでも「高級コンプレッサー、EQ、エフェクトを“アナログの暖かさ+モダンな精度”で提供」としています。
  • 代表的な製品に、本記事で扱っている Mu(→ VM-COMP)や、EQ の「Massive(→ MP-EQ)」、FET 型コンプレッサー「1178」、リバーブ/エコー系プラグインなどがあります。

なぜ“Mu”が選ばれてきたか

  • Mu は「変動バイアス(vari-mu)型チューブコンプレッサー」の特性を忠実に再現しており、ミックス・マスターバスにおける“まとまり感(glue)”を得るために非常に適していました。
  • また、L/R モードだけでなく M/S(ミッド/サイド)モードにも対応しており、ステレオ空間の制御にも強かった点も特徴です。
  • デジタル環境でも高サンプルレート(最大384 kHzなど)対応など、スタジオワークフローに配慮されていた点も強みでした。

このような背景を持つブランド/製品だからこそ、今回の VM-COMP への移行も信頼性を保ったうえで機能強化されたと言えます。

採用/活用時の視点:あなた(スタジオ運用・ミックス/マスタリング)ならではのチェックポイント

ミックス・マスタリング作業で使用する場合、以下のような視点で VM-COMP を捉えると効果的です。

  • バスマスター/ミックスバスに配置
     Mu/VM-COMP の定番用途は“ミックス全体をひとつにまとめる”バスコンプです。トラックを個別にコンプするのではなく、バス上で適度な抑制と“まとまり感”を付与することで、ラウドでまとまった印象を得やすくなります。
  • サイドチェイン EQを活用
     例えばドラムバスやキック・ベースの組み合わせなどで、「低域がグルーを阻害している」と感じるときにはサイドチェイン EQで低域を少し落としてからコンプをかける、という流れが有効です。VM-COMP ではこのあたりをグラフィックで操作できるようになったので、使いこなせばミックスの精度が上がるでしょう。
  • アタック/リリースの拡張を活かす
     急速なアタック+リリースでトランジェントをガチっと掴むような使い方だけでなく、ゆったりめアタック+長めリリースで“音を繋げる”ような使い方も、Vari-mu の特性を活かした典型です。VM-COMP ではそのレンジが広がったため、状況に応じた使い分けがしやすくなっています。
  • M/Sモードを検討
     ステレオの広がりや中央定位/側域のバランスを調整したいとき、M/Sモードを使って中央(Mid)の圧縮量を少し強め、Sideをゆるめに抑える、という手法が効果的です。Mu時代から備わっていた機能ですが、VM-COMPでも同等以上の挙動が担保されています。
  • プリセットは参照として使う
     Mu/VM-COMP に用意されているプリセットを「出発点」として、自分の曲/ミックスに応じて微調整していくのがおすすめです。特に“マスターバス/ドラムバス”用途ではプリセットの名前から意図を読み取りやすいでしょう。

まとめ

長年愛用してきた Mu が、機能強化された「VM-COMP」として新たに登場しました。Pulsar Audio の高品質なモデリング/ワークフロー配慮という背景を踏まえつつ、サイドチェイン EQ の可視化、拡張されたアタック・リリース、そして既存セッションとの互換性といったアップデートにより、特にミックス/マスタリング用途で使えるポテンシャルがさらに高まりました。ミックスバスやマスターバスに置いて「もうひとつの仕上げの一手」として活用してみる価値は十分にあると思います。