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はじめに
Wavesの「Lシリーズ」は、デジタルマスタリングの歴史そのものといっても過言ではありません。
90年代のL1に始まり、L2・L3・L316を経て、ついに新世代モデル L4 Ultramaximizer が登場しました。
これまでの「音圧を稼ぐ」リミッターから、「音楽を活かす」リミッターへ。
本記事では、その進化の流れと、L4の実力を詳しく解説します。
L4 Ultramaximizerの特徴

L4は、従来のLシリーズが持っていた即効性・安定性を踏襲しつつ、AI的なアプローチによる“自動最適化”を取り入れた新しいリミッターです。
そのコンセプトは「誰でもプロの結果を得られるマスタリングツール」。
複雑な設定をしなくても、入力信号に応じて最適なリリースとクリッピング動作を行い、自然でパンチのある音圧を実現します。
特に注目すべきポイントは以下の通りです。
- 5種類のリミッティングモード(Modern、Smooth、Aggressive、Safe、L2)を搭載
- True Peak・LUFSメーター対応により、ストリーミング時代の規格に対応
- オーバーサンプリングによる高品位な音質
- 超低レイテンシー設計で、マスタリングだけでなく録音・ライブにも使用可能
従来の「潰して上げる」スタイルではなく、「自然な音圧感とダイナミクスの両立」を目指した設計思想が感じられます。
Lシリーズの歴史と各モデルの特徴
L1 Ultramaximizer

1990年代に登場した初代L1は、デジタルリミッターの草分け的存在でした。
荒削りながらも強いパンチを持ち、今でも“あの時代の音”を再現したい時に使われます。
L1の音はやや硬く、深くかけると高域が潰れやすい傾向がありますが、その攻撃的な質感がロックやヒップホップなどには好まれました。
特に、ボーカルやスネアなどのトラック単位でのピーク抑制にも適しています。
L2 Ultramaximizer

L2はL1の次世代として2000年代初期に登場。
自動リリース制御(ARC)を搭載し、より滑らかで透明な動作を実現しました。
「音圧を上げても破綻しない」点が評価され、マスターバスの定番として長く使われてきました。
L1よりも自然な音の伸びを持ち、マスタリング全体を安定させる用途に最適です。現在でも根強い人気があります。
L3 Multimaximizer

L3は、Wavesが初めてマルチバンド処理を採用したリミッターです。
5バンド構成で周波数帯ごとに独立したリミッティングを行い、特定帯域のピークだけを抑えることが可能になりました。
低域の暴れを抑えつつ高域をクリアに保つなど、より音楽的なコントロールが可能です。
ただし、設定が複雑で扱いに慣れが必要な点や、音に独特のカラーがつく傾向もあります。
L316 Multimaximizer

L316は、L3の進化版として登場した16バンド・マルチリミッターです。
バンド数が大幅に増えたことで、より精密な周波数制御が可能となり、プロフェッショナルなマスタリング現場で高い評価を得ました。
クラシック音楽や映画音楽のように、広いダイナミックレンジを持つ素材に特に強く、音を壊さずに全体のバランスを整えられます。
一方で、CPU負荷は高く、操作も複雑になったため、誰でも簡単に扱えるツールではありません。
精密さと引き換えに、スピード感を犠牲にした“職人的リミッター”といえます。
L4 Ultramaximizer

そして2020年代後半に登場したL4は、L2のシンプルさとL316の精度を融合したような存在です。
マルチバンドではなく単一構成に戻しつつ、AI的なアダプティブ処理で素材ごとの最適化を自動で行います。
音の立ち上がりは鋭く、低域もタイトに保たれ、全体にモダンで自然な印象です。
L4の「Aggressive」モードはEDMなどのラウドなジャンルに最適で、「Smooth」モードではアコースティック系にも対応。
つまり、L4一台で多ジャンルをカバーできる柔軟性を持っています。しかも簡単というところがポイント。
各モデルの比較
| モデル | 年代 | 特徴 | 音の傾向 |
|---|---|---|---|
| L1 | 1990年代 | シンプルなピークリミッター | 荒く硬質、強めの音圧 |
| L2 | 2000年代 | ARC搭載、滑らかな動作 | 自然で安定 |
| L3 | 2005年頃 | 5バンド・マルチ処理 | 柔らかく音楽的 |
| L316 | 2008年頃 | 16バンド高精度処理 | 精密で透明 |
| L4 | 2025年現在 | アダプティブ制御+5モード | モダンで自然 |
L4を活かすための実践ポイント
L4を使う上でのポイントは、リミッターなのでまず「深くかけすぎないこと」と「モード選択を聴感で判断すること」です。複雑な操作はいらないので助かります。
リダクションを抑え、素材に応じてモードを切り替えることで、音楽的な仕上がりになります。
True Peakモードをオンにすれば、配信後の歪み対策も万全です。
また、LUFSを確認しながら仕上げることで、各配信サービス(SpotifyやApple Musicなど)の基準に合わせた音量設計が可能になります。
まとめ
Lシリーズは、30年以上にわたって進化を続けてきたWavesの象徴的リミッターです。
L1の荒々しさ、L2の透明感、L3/L316の精密さ――それらの要素を踏まえ、L4はまさに“集大成”と呼ぶにふさわしい存在です。
音を潰さずに前に出す、そしてストリーミング時代に即した正確なラウドネス管理。
Waves L4 Ultramaximizerは、これからの時代のマスタリングスタンダードとなるかもしれません。
個人的に、クリッパーが追加されたところがポイントでもあります。最近クリッパープラグインは各社から徐々に増えてきました。いつも私はKAZROGのK Clipを使用していますが、L4を使用する場合は不要になるかもしれません。






